タイムトラベルが可能な時間と宇宙の性質について

タイムトラベルの2つの方法

タイムトラベルの方法は2つ考えられる。1つは、ビデオテープを巻き戻したり早送りする要領で、この世界のすべての現象を同時に過去に戻したり、未来に進めたりする方法。もう1つは、タイムマシンのような乗り物に乗って、その機械と中に乗り込んだ人と物だけが、過去や未来の時間に移動する方法。前者を「時間操作型」、後者を「時間移動型」のタイムトラベルと呼んでおく。
以上のことからタイムトラベルが可能になるのは、時間と宇宙が次の特質・性質をもつときだとわかる。1つは、時間が現在から過去へと逆向きに流れる性質をもつとき。もう1つは、存在する時間が現在のこの瞬間の時間だけでなく、過去や未来の時間も時間軸上に存在しているとき。われわれが考える常識では、時間とは過去・現在から未来へ向かって一方的に流れるものであって、逆向きには流れない。また、存在している時間は現在の時間だけであり、過去や未来の時間は存在していない。時間と宇宙の性質が、人間が考える常識的なものである場合、過去や未来を自由に行き来するタイムトラベルは、論理上はありえないだろう(ただし、現在から未来への一方的な時間移動=未来へ行ったきりで過去に戻ることの出来ない時間移動は可能性がある)。

時間軸(多元時間)世界のモデルと誕生

この世界のすべての現象を同時に過去に戻したり、未来に進めたりする「時間操作型」のタイムトラベルを描いた作品はあまりみかけない。
多くのタイムトラベルもの作品は、タイムマシンに乗って過去や未来を行き来する「時間移動型」のものだろう。存在する時間が現在のこの瞬間の時間だけでなく、過去や未来の時間も時間軸上に存在している世界・宇宙を「時間軸(多元時間)世界」と呼んでおく。
一般的な「時間軸世界」は、過去−現在−未来の時間からなる「過去−現在−未来型」だが、過去と現在の時間のみからなる「過去−現在型」の時間軸世界のモデルも考えられる(過去へは移動できるが、未来へは移動できない世界)。
世界・宇宙の性質が、現在の時間しか存在しない常識的なものではなく、過去や未来の時間も存在するのなら、その世界はどのようにして誕生したのだろうか。3つの説が考えられる。

(1)瞬間誕生説
何もない空間(無の空間)に、ある日突然一瞬にして時間軸世界が誕生(発生)した。神のような存在が世界を創造したという考えと、創造主は存在せず、世界(宇宙)が自然発生的にあらわれたという考えがある。

(2)永遠存在説
宇宙の存在しない「無の状態」があって、そこに宇宙が誕生したのではなく、はじめから(?)「時間軸世界」が存在していたとする説。世界(宇宙)には、はじまりも終わりもなく、過去−現在−未来からなる「時間軸世界」が永遠に存在し続けているという考え方。

(3)先頭の時間仮説
宇宙が誕生した後、「先頭の時間」の経過に従って過ぎ去った過去の時間のみが時間軸上に積み重ねられるとする仮説。存在している時間は、宇宙誕生から先頭の時間までの時間だけであり、先頭の時間よりも先の時間(未来)はまだ存在していないとする考え方。われわれが生きている現在が「先頭の時間」なら、過去の時間のみが存在する「過去−現在型」の時間軸世界のモデルとなる。

時間軸世界の分類

時間軸世界は、「この世でおこる出来事はあらかじめすべて決定されているのか、人間の自由な意志でどのようなものにもなるのか(決定論か自由意志論か)」「歴史の改変は可能なのか」「タイムパラドックスが生じるか」「世界の数は1つだけか」を基準にして3つのものに分類できる。

(1)フロッピーディスク型の世界
歴史の改変が可能な、自由意志論の世界。世界の数は1つなので、歴史の改変が行われると「オリジナルの歴史」の上に新しい歴史が上書き保存される世界。様々なタイムパラドックスが生じる。

(2)エッシャーの騙し絵型の世界
タイムトラベルによって生じる因果律の矛盾も織り込んだ上で、すべての出来事が決められている決定論の世界。世界の数は1つ。すべてが決められているので、歴史の改変もおこらない。未来の事象が過去の出来事の原因になるという、因果律の矛盾・循環構造・無限連鎖などのエッシャーの騙し絵との類似性をもった世界。

(3)パラレルワールド
「オリジナル(本来)の世界」は歴史の改変が生じない。タイムマシンによる時間移動が行われると、それによって新しい世界(パラレルワールド)が発生してしまう(増殖する世界)。タイムパラドックスを解決するために考案されたらしい。


別サイトでもう少し細かく記述しています。
 「タイムトラベルが可能な時間と宇宙の性質について」
   http://p.booklog.jp/book/7580