解雇規制緩和と労働・雇用制度改革私案

解雇規制を緩和して労働市場を流動化・活性化させないと、工場や企業が海外に移転し、産業が空洞化し、経済の停滞・失業者の増加等最終的に労働者が不利益を被ることになると指摘されている。
ただ、日本のように新卒一括採用が通常の雇用形態であり、新卒者以外の就職活動が難しい状態で解雇規制を緩和しても、失業者や非正規雇用者が増大するだけであろう。特にセーフティネットを拡充しないまま解雇規制だけを緩和すれば、小泉政権下での「非正規雇用者の増大と自己責任」をめぐる問題と議論が蒸し返されるのは目にみえている。
一方、現在のように労働者が正規雇用者と非正規雇用者に分断されている状態では、労働者の解雇規制という制度が、既得権益をもつ正規雇用者の権利を守るために非正規雇用者(特に若年層)を犠牲にするという歪な構造をもたらしている。
こうした状況を解決する万能薬・処方箋はないのだから、10年から20年位の時間をかけて社会制度のあり方を徐々に変えていく必要があるだろう。
以下、私の考える労働・雇用環境改革私案の抜粋を提示しておく。

解雇規制を緩和する前に非正規雇用者の待遇を根本的に改善して、解雇に対する不安を減少させる状況をつくっておく。非正規雇用者にも正規雇用者と同等の権利をあたえることによって、企業側が非正規雇用することのメリットを減少させる。
同一労働同一賃金制の導入。最低賃金の保障。ボーナス・退職金等正規雇用者のみが対象となっている制度を非正規雇用者にも拡大させる(解雇規制を緩和するかわりに、正規雇用非正規雇用の区分を実質的に無効化させる。正規雇用者の利益を守るために非正規雇用者を犠牲にするという現状を根本的にあらためる。と共に正規雇用者になれなかったのは本人の自己責任だといった主張が再び台頭する基盤をなくしておく)。
社会保障制度を根本的に変革する。「正規雇用者は社会保険・厚生年金、自営業者や非正規雇用者は国民健康保険国民年金」加入という制度を廃止し、国民全員が同一の健康保険・年金制度に加入することとする。企業が社会保険料・厚生年金保険料の半分を負担する制度も廃止し、社会保険は原則的に税金による運営にきりかえる。なお私個人は、年金制度をベーシックインカムのような制度にかえられないかと考えている。

上記の改革を行うのと同時に賃金体系を根本的に変革する。給与を最低保障的な「固定給」と、会社の業績・景気動向によって大幅に増減できる「変動給」に2分する。経営状態が悪いときは「変動給」を圧縮することによってこの状況に対処できるようにする。公務員の賃金体系も上記のものに変更すれば、公務員の給与が高すぎて財政を圧迫するという状況を少しは改善できるかもしれない。なお、賃金体系を上記のように変更した場合、ローンが払えずに自己破産する人が大量に出現するだろうから、ローンの返済方法を変更する対策なども同時に行う必要があろう。

以上述べたことは単なる思いつきにすぎないから、実現困難なだけではなく、理論的にも多くの問題点を抱えてはいるだろう。ただ、80年代までの社会のあり方を根本的にかえていかなければ、多くの人が閉塞感を感じる状況がいつまでも続いていくだろう。

上記の内容は、別サイトに記載していた「労働環境・雇用環境改革の一私案」の要旨の抜粋です。
 http://d.hatena.ne.jp/ono_gene+archives/20100623/p1