理想主義の2つの形


理想主義者には2つのタイプがあるように思う。
1つは、遠い将来には自分たちの理想が実現できると考えている人たち。もう1つは、結局人間には理想は実現できない、そう思いながらも理想を追求すべきだと考えている人たち(このようなタイプを理想主義者といってよいのかは疑問だが)。
また、理想主義者は理想を実現する方法からも2つに分けられる。
1つは、究極の目標(理想)がどのようなものであるか、具体的なビジョンをもっていて、その実現にむけて前進していこうとする方法。
もう1つは、究極の目標(理想)の具体的なビジョンをもたず、現実の悪いところ、よくないところをすこしずつ改良・改善していくという方法。
将来理想が実現できると考える人を「楽観派」、理想の実現は不可能だと考える人を「悲観派(諦念派)」と呼び、究極の目標(理想の実現)に向けて前進していく方法を「理想追求主義」、現実を改良・改善すること自体を目的とする方法を「現実改良主義」と呼ぶことにする。
2つのパターンを組み合わせると4つのタイプに分けられる。
 1・楽観派 − 理想追求主義
 2・悲観派 − 理想追求主義
 3・楽観派 − 現実改良主義
 4・悲観派 − 現実改良主義

1・楽観派 − 理想追求主義
将来の理想の社会(世界)の具体像をもっていて、かつその理想が実現できると信じている人たち。
神の世を実現しようとする宗教家、将来、共産社会が実現できると信じているマルクス主義者などにこのタイプがみられた。
神の世だとか、共産社会が理想の姿だと考えていない人たちにとっては、彼らは迷惑な存在だろう。

2・悲観派 − 理想追求主義
将来の理想の社会の具体像をもっているが、それが実現はできないと考えている人たち。
理想が実現できないことに絶望すれば虚無主義におちいってしまうかもしれない。
理想が実現できないと知りながらも運動を続ければ、運動を続けること自体が自己目的化してしまう。
自分自身の生きがいを満たすために運動を行い、目的が達成されるかは二の次になるという倒錯におちいりやすい。

3・楽観派 − 現実改良主義
現実の悪いところ、よくないところをすこしずつ改良・改善していけばやがては理想の社会が実現できるという楽観的な考えの人たち。
理想の社会についての具体像があるわけではないので、価値観のちがいから反発を受けることは少ない。
ただ、道徳的・倫理的な姿勢が人から疎まれる傾向はある。

4・悲観派 − 現実改良主義
人間に理想の社会は実現できないと思いながらも、虚無主義におちいらずに、現実の悪い点を改革・改良しようとする、ある意味ストイック(禁欲的)といえる生き方かもしれない。
人は往々にして「すべてかゼロか(理想を実現するか、現実をすべて肯定するか)」という発想におちいりやすいが、理想は実現できなくても現実を少しでもよくしよう(現実の悪いところはなくしていこう)という、一番望ましい生き方かもしれない。