永住外国人の参政権問題


永住外国人参政権問題を論じる際は、参政権付与に賛成か反対かだけではなく、国籍取得の問題を含め、政府の基本方針はどうあるべきかについて論じる必要がある。1・参政権を付与せず国籍取得も難しいままでいいとする方針。2・参政権は付与しないが、国籍取得を容易にして、参政権を欲しい人には国籍を取得してもらう方針。3・国籍取得を容易にはしないが、参政権は付与する方針。4・参政権を付与し、国籍取得も容易にする方針。
また、将来の目標と現時点で実現すべき政策をわけて考える必要もある。例えば、宮台真司は将来参政権を付与することには賛成だが、現在はまだ時期尚早なので2の方針(国籍取得を容易にする方針)をとるべきだとラジオで主張していた。この場合、在日朝鮮の人たちは、今頃国籍取得を容易にするといっても遅いと感じるだろうが。
また、外国人に参政権を付与すると日本が乗っ取られると主張している人たちは、口では2の方針(参政権が欲しいなら国籍を取得しろ)を唱えていても、本音では中国、朝鮮系の人に国籍を与えると母国のスパイとなる可能性があるから、彼らには国籍を与えるべきではないと考えているのかもしれない。
また、国籍はどのような要件、条件を満たせば取得できるのかについても慎重な議論が必要だろう。右派・保守派の中には、天皇・日の丸・君が代に愛着をもつ人にのみ国籍を与えるべきだと考えている人がいるかもしれないし、左派の中には憲法を擁護する人にのみ国籍を与え、憲法改正論者には与えるなと考えている人がいるかもしれない。日本の国籍を取得することと、日本の文化・伝統・歴史を尊重することを同一視している右派・保守派と、これらを別のものと考えている左派・リベラル派では議論が噛み合わないだろう。
参政権を付与する場合は、それが永住外国人と日本の国民にもたらす負の側面を想定し、これらをケアする政策を二重、三重に考案しておく必要がある。
一方、参政権を付与しない場合は、永住外国人の人たちに日本の行政や国民がどのような対応をとるのかが問われるだろう。参政権がなくても安定した生活が送れるような行政を行うのか、それとも日本が嫌なら出ていけという排外的な態度をとるのか。
私自身の考えは、理想論としては将来的に4の方針(参政権も付与し、国籍取得も容易にする方針)をめざすべきだと考えている。だが、現時点ではこの方針をとるのは難しいだろう。だから、次のような方針をとるべきと考えている。


参政権を付与する場合
1.参政権付与によって外国人に生じる可能性のあるデメリット
宮台真司の主張の受け売りだが、参政権を付与したことによって行政が支援を打ち切ってしまう可能性がある。参政権がなかった頃より生活が苦しくなる可能性がある。
2.参政権付与によって日本の国民に生じる可能性のあるデメリット
外国人ばかり優遇し、日本人の自分たちが冷遇されていると感じる人たちが増加する可能性がある。
参政権を付与する場合は、上記の問題やその他に生じる可能性のある問題への対応策を考えておく必要があるだろう。


参政権を付与しない場合
国籍取得を容易にする方針をとり、外国人の人たちの生活向上に役立つ行政を行う必要があろう。
この場合も、冷遇されていると感じる日本人が増えないような政策も同時に行う必要があろう。
だが、以上述べた方針も理想論にすぎず、現在の経済情勢では、日本人、外国人問わず、生活向上の政策は取りづらいというのが、実態であろう。


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