NHK朝ドラ「ゲゲゲの女房」 布美枝さんは「努力信仰者」

NHKの朝ドラでは、主人公の村井布美枝(松下奈緒)が、「お父ちゃんはこんなに頑張っているんだから、いつか報われる」「お父ちゃんが認められたのは、努力が実ったからだ」と、努力すれば成功するといった「努力信仰」的な発言をよくしている。
漫画家に限らず、小説家でもミュージシャンでも映画監督でも、表現活動をしている人の場合、才能があることと努力すること、売れることにはなんの相関関係もない。
才能もあり努力もしたけど売れずに消えていった人は数多くいるだろう(むしろそういった人の方が多いかもしれない)。
売れるかどうかは、才能や努力よりも運の要素の方が大きいだろう。
水木しげるは、芸術家気質をもっていたから作品作りに真剣にとりくんでいただけで、本人には努力をしているといった自覚はなかったかもしれない。
自分は「ゲゲゲの女房」の原作を読んでいないので、実際の水木しげる奥さん、あるいは原作の中の水木夫人が、ドラマ同様「努力すれば必ず成功する、いつか報われる」といった努力信仰的な考えをもっていたのかは知らない。
だが、水木しげる本人は「頑張らなくってもいいじゃないか」「怠け者でなにが悪いんだ」といった、努力主義とは正反対の思想・価値観をもっているはずである。
水木しげるをモデルにした作品で、水木しげるの価値観と正反対の主張が描かれているのは、水木しげるの漫画だけではなく、その思想や価値観にも惹かれている者にとっては、ちょっと違和感がある。
まあ、でも、作品をどのようなものにするかは、作り手側の自由であるし、「怠け者でいいじゃないか」という水木思想を全面に押し出すよりは、「努力が大切なんだ」という主張を強調した方が多くの視聴者に受け入れられるだろうから、仕方がないだろう。